教えて!弁護士相談Q&A「一事不再議(の原則)」

ペットと飼い主のイメージ画像
管理規約でペット飼育が全面的に禁止されているマンションです。
ペット飼育を希望する住戸が増えてきたため、アンケートを実施したり、勉強会を開くなどして、管理組合で検討を行ってきました。さまざまな意見が交錯する中で、最後に昨年の通常総会で決議をとりましたが、規約変更の要件(区分所有者および議決権の4分の3以上)には至らず、ペット飼育解禁とはなりませんでした。
これに対し、ペット飼育を希望している人たちは納得がいかず、次回総会の議案に再度組み込んでもらうよう理事会に働きかけています。
理事の中にもペット飼育を容認する考えの人がおり、次回総会において規約改正を上程するべきと意見を述べていますが、同一の議案を再び総会に上程することは認められるのでしょうか。
【結論】

貴マンションの管理規約において特別な規定がない限り、同一の議案を再び総会に上程することは禁じられていないものと考えられます。

【理由】

ご質問に関して、マンション管理組合の総会において「一事不再議」という考え方が妥当するか、という議論があります。
「一事不再議」とはどのような考え方かと言いますと、一般的には、会期中に一度議決された同一の事項について再び意思決定をしないことを指します。これは、一般的に会議体の運営に関してあてはまる合理的なルールとして扱われており、例えば、憲法や国会法、地方自治法には直接該当する規定はないものの、国会や地方議会の運営上はこのルールが採用されています。
それでは、マンション管理組合の総会においてはどうかと言いますと、区分所有法や標準管理規約にも「一事不再議」を定めた規定は存在しません。仮に、貴マンションの管理規約においてこのルールが定められている場合には、これに従うことになります。しかしながら、実際のところ、「一事不再議」について規定した管理規約は非常に少ないのではないかと思われます。そのため、管理規約にこのような規定がなければどのように考えるべきでしょうか。
そもそも、総会は管理組合における最高の意思決定機関と位置付けられており、管理規約の設定・変更・廃止、共用部分・敷地の管理に関する事項など、管理における重要事項を総会で討議・決議することが求められています。少しくだけた言い方をしますと、マンション管理に関する重要事項は、各組合員の意見が集約、反映されるように、よく話し合って決めましょう、これによって住民間のコミュニティの形成やマンション資産価値の向上を図りましょう、というものです。
そうすると、たとえ一度否決された議案であったとしても、各組合員の意見は常に固定化されているとは限らず、その時点での管理組合にとっての最善のあり方が組合員の討議によって模索されるべきであると考えます。
そのため、例えば、前年の通常総会で否決された議題について、翌年の総会で再び上程されることは禁止されていないと考えます。「(同一の)会期中」という「一事不再議」の定義からも、翌年の総会はあてはまらないものと考えます。
なお、そもそもペット飼育を一律に禁止する管理規約が有効かという議論はあり得ますが、このような管理規約も有効であると認められた裁判例が存在します。また、管理規約によりペット飼育が禁止されているにもかかわらず、これに違反する者に対しては、区分所有法6条の共同利益背反行為に該当するものとして、区分所有法57条の停止措置などが講じられる可能性があります。そのため、各組合員としても、現状では管理規約によりペット飼育が禁止される以上は、ペットを飼育してはいけません。
また、管理規約を改定してペット飼育を許可する場合には、動物の種類及び数、管理組合への届出等の手続、専有部分における飼育方法、共用部分の利用方法などについて規定したペット飼育細則もあわせて決議すべきであり、貴マンションに適したペット飼育のルールを具体的に議論するようにしましょう。

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